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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第3章(5)

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早いものでもう年の暮れです。
なんにもしなかったような一年でした。



(5)

 

 そびえたつ巨大な門の横手にある、小さな通用門にアイは手をかけた。勝手を知る者の動きで、門を開き中へと入る。

 広大な敷地を誇る館の手前、二人の前には手入れの行き届いた美しい庭が広がっていた。季節の花だろうか、花壇には艶やかな色彩が咲き乱れ、中央の噴水の周りには虹が見えた。

「…すごいな…」

 思わず感想を漏らすと、それを聞いたアイが肩をすくめた。

「――財力にものをいわせただけよ。それも、公に出来ない方法でね」

「かなりの悪党みたいだな」

「かなり、なんて生易しいものじゃないわね」

 アイは表情も変えずに吐き捨てた。けれど、館の主に対しての悪感情は、十分に伝わって来る。

 そのままでしばらく進むと、館から鮮やかな緋色が飛び出してきた。それは一直線にユウに向かって来る。

「熱烈な歓迎ね。ここまで愛情を示されるなんて、そう滅多に無いんじゃない?」

 まるで興味の無いは話題のように、アイは足を止めることは無い。声も内容とは裏腹に、何の感情もこもっていないように聞こえた。ユウはその様子に、違和感を覚えた。

彼の知る彼女ならば、こんな場合にはもっとおもしろがって、ユウをからかう筈だ。それなのに、言い回しはその通りだが、そこにアイの感情は含まれてはいないようだ。

 とりあえず、いつも通りにしゃべっているといったおざなりな感じが否めない。

 そこに何らかの意味があってそうなのか、アイ自身がユウの反応に飽きてきているのかはわからなかった。

「そんなに急ぐんじゃないの。せっかくのドレスをやぶってもいいの?」

 こちらに走ってくるゆうに、アイが注意をする。ゆうはそれを聞いて、一度足を止めるとドレスのすその乱れを整えた。

 それを見たアイはゆうに近づくと、一緒にドレスの乱れを直してやる。一通りの身づくろいが終わると、ゆうの背中に手をあてユウの方にそっと押しやった。

「さきに、行ってるから」

 そうして館に向かい踵を返す。片手を軽く挙げて肩先でひらひらと振りながら、一度も振り向くことなく、アイは歩み始めた。

「…あの…」

 アイを背中を目で追っていたユウは、自分にかけられた声でゆうに視線を戻した。朝から懸命に悩んで選んだドレスは、彼女によく似合っていた。鮮やかな緋色は瞳と同じで、繊細なシルエットを上質な布を惜しみなく使って醸し出している。

 普段着だっただろう昨日と違い、その姿は良家の令嬢に写った。衣装のせいなのか、自分の屋敷内のためなのか、態度も控えめでおずおずと声をかけてきた。

 ユウはそんな彼女に、どう声をかけてよいのかわからず頷いて先を促した。ゆうはドレスと同じ瞳を揺らしながら、ユウに手を伸ばしてきた。ユウが拒否をしないことを確かめると、そのまま抱きついてきた。

 痛みすら感じるほど、強くまるでしがみつくような抱擁に、ユウはしかたなくその背中をそっと叩いてやった。小さな子どもにするように、優しく穏やかに――。

「…ごめんなさい…」

 ユウの胸元に顔をうずめながら、くぐもった声がした。縋りつくような腕の力はやや弱まったが、ゆうは離れようとしない。

「別に俺は構わないけど、あんたは大丈夫なのか?」

 無理に引き離すと訳にもいかず、状況を指摘することで、自分から離れるように仕向けたつもりだった。けれどゆうは頭を振りながら顔を上げ、はっきりと言い切った。

「大丈夫です。館の中では何をしても、私は自由だから」

「館の中?」

 会話をした事で落ち着いたのか、ようやくゆうが躯を離す。しかしその手は繋がれたまま、離そうとはしなかった。

 ゆうはユウの指に自分の指をすべり込ませると、ゆっくりと歩き始めた。

「ここは、籠のようなものだから――」

 ぽつりと零れたゆうの言葉が、妙にユウの中に残った。館が籠であるなら、その中の自由を赦された彼女は、何なのだろうか…。

 そして思いついた。館の中では自由ということは、他ではそうではないという事なのではないのだろうか。確か昨日、そんな事をアイが話していたような気がする。

 その時は良い所のお嬢様なのだとしか思わなかったが、それだけでは無いのかも知れない。父親の事といい奔放に見えた彼女には、もっと深い事情を抱えているのかも知れなかった。

 

「ようこそ、我が屋敷へ――」

 芝居がかった動作で、ユウを迎えたくれたのは、これも知った顔だった。館の主であり、ゆうの父親であろう男の傍らのアイに目をやると、苦笑に似た表情をしていた。

「お招きいただき、ありがとうございます」

 ユウが儀礼的に頭を下げると鷹揚に頷きながら、男は名乗った。

「わたしの名は、じぇいだ。覚えておきたまえ」

 予想通りの名前に溜息をこらえながら、この男を悪し様に言ったアイが理解できた。一見、人当たりが良さそうに見せかけてはいるが、その実、人を見下している事が丸見えだ。いくら世界が変わっても、こいつとの関係は改善できそうも無い。

「じぇい様。このユウは、異文明の研究で世界を廻っているんです。きっと、お役に立てると思いますわ」

 媚びるようにアイがじぇいに言うと、満足したように笑った。

「きみの事は、我が娘から聞いているよ。怪我をしていたそうだが、大丈夫なのかね?」

 絶対に心配などしていないとわかるが、一応は頷いておく。こちらが下手に出ている限りは、事が荒立つ事は無いはずだ。

「はい。お嬢さんのお陰で、てぃーに治癒術を施してもらえました」

「そうだったな」

 てぃーの名が出たときに一瞬、じぇいの顔が歪んだのをユウは見逃さなかった。どうやら、てぃーの事を快く思っていないらしい。

 じぇいはユウと指を絡ませたままのゆうを見ようとはせず、事務的に言いつけた。

「ゆう、お前はもう下がりなさい」

 それは冷たく、娘にいう口調ではなかったが、ゆうは何も言わずそれに従った。手を離す前の一瞬に、力を込めて握りしめたのは、せめてもの意思表示なのだろう。

 

 館の中にも、高価そうな調度品が溢れかえっていた。けれどそれぞれが個性を主張しすぎていて、全体の調和がまるで無かった。その為、持ち主の感性の悪さが前面に出ている形になっていた。

 アイはじぇいの傍らに寄り添い、媚びるような笑みを浮かべていた。ユウは先を歩く二人の後を付いていきながら、この館の造りが気になっていた。

 ユウは採掘工であった。坑道を掘るにはその山の形を考え、それを崩すことの無いように掘る必要があった。むやみに坑道を作れば、内部の空間が山の重さに耐え切れず崩落を起こす。だからこそ、この館の不自然さがすぐにわかった。

 柱が異常に少ないのだ。高い天井と広間はわかるが、一部屋ずつが大きくその室内には柱が全く無い。重厚な外壁から見て、天井もかなりの重量があるはずなのだが、それに耐えうるだけの内部構造にはなっていない。建ててからそう年数が経っていないからこそ耐久しているのだろうが、この分ではあと数年の間に崩壊するのは間違いない。

 もちろん、それを忠告する義理も必要もユウにはなかった。第一、じぇいがユウの意見を素直に受け止める筈が無い。それについては、確信めいたものがあった。

 

 広い室内をいくつか通り過ぎると、中庭に出た。しかしそこは、外の庭とは打って変わり、花壇の一つも無い殺風景な庭だった。

 二人は中庭に降りると、足を止めた。ユウも止まり、庭を見渡すと、中央に岩盤が置かれているのが見えた。かなり大きい一枚岩で、その表面には何かの文様が刻まれている。

「ユウ、その岩、興味あるんじゃない?」

 今までユウの存在を忘れていたようなアイが、唐突に振り返った。意味ありげな物言いと表情に、ユウは岩盤の前に立った。その動きにアイが微かに微笑んだのが見えて、自分の行動が正解なのだとユウは思った。

 岩と見えていたものは、よく見ると見たことも無い物質だった。金属のような光沢があり、光の加減で色彩を微妙に変える。屈んで触れてみると、冷ややかで滑らかな感触がした。その手触りも、ユウの記憶では初めて触れるものだった。

「――おお…。すばらしい…」

 後ろから押し殺した声がした。後ろを振り返ろうとして、ユウは自分の周囲の変化に気づく。ユウが触れた場所が、淡い青い光を放っていた。

「っ!」

 驚いて思わず叫びそうになったが、さっと近づいたアイによって、それは阻止された。

「予想どおりって振りをして、その上に立って」

アイはユウにだけ聞こえる声で囁くと、すぐに離れた。

 ユウは身を起こすとゆっくり足を進め、その板の中央に立った。するとユウを中心に全体が発光し、文様が宙に浮かび上がった。

 

 

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