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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第2章(10)

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第2章はこれで終わりです。
総てを説明したわけではありませんが、それは後々に明らかにするつもりです。
文中での表現になるので、わかりにくいかもしれませんが…。
ケイのモデルは、某有名RPGのおっさんです。
つかみどころの無いキャラを装った二面性があるこのキャラが好きです。裏切っちゃうんだけど…。



(10)

 

「なんというか…。とんでもない子だとは言ったけど、ここまでとんでもないとは思わなかったよ」

 おそらく、アイとユウを除いた全員の思いをケイが代弁した。

「そうでしょうか?」

 アイは令嬢然とした微笑を浮かべると、小首を傾げる。その様は清楚で愛らしいといえるが、さっきの彼女を見てしまった人間にとっては、見事な変り身に感心するだけだ。

「あのさ、もうそれやめたら?素の君で、いいと思うんだけど」

 アイはそれでも態度を変える事なく、ケイに問いかける。

「それは、彼女も同じなのでは?」

「巫女という肩書きを押し付けられて、ありのままの姿を晒したことなんてないんでしょう?」

 アイはティーに少し近づくが、ティーの体が怯えたように震えたのが見えた。

すばやくティーを支えていたユウが、抱え込むようにその躯をアイから遠ざける。その様子にアイは苦笑を浮かべると、その距離をとるように後ろに下がった。

「あらあら、こっちのユウくんには、嫌われちゃった。どうしてなの、ユウ?」

 アイはユウに、悲しそうな表情で向き直る。わざとはわかってはいるが、ユウにはそこにアイの本音が少し混ざっている気がした。ユウの知る限り、アイはティーには優しかった。それはユウの居た世界での話だったが、ここのティーはユウのティーにとても似ている。そんな彼女を傷つけるのは、アイにとっても心が痛むのだろう。

「あなたはそれでいいの、ティー?自分の思いも隠して、ずっと、いつ嘘がばれるか怯えて過ごしたいの?」

 アイのティーに向かって、話しかけた。その声は静かな分、真剣さが込められているように聞こえた。

「ケイさん、あなたが村と彼女を守りたいのはわかります。でも偽りが明らかになった時、その反動は大きくなり、あなたの守ろうとした物が壊れるかもしれません」

「アイ、お前…」

 ユウはアイの真意が、ようやく見えた気がした。

 おそらく彼女は自分が世界を廻ることで、立ち寄った世界への影響を知っているのだ。だから幻の巫女に頼るこの村の歪みを、放っておけなかったのだろう。自分のせいで巫女の力が存在しなくなる事で、ここがどうなるのか、ティーがどうなるのか考えた上での行動だったのだ。

「こいつの行動は、あんた達には余計な事に見えるかもしれない。だけど、それにはちゃんと理由があるんだ。アイは、とんでもない奴じゃない」

 ユウは、アイの考えを伝えようとした。しかし意図は理解していても、うまく言葉が見つからない。自分の言葉が足りないことが、歯がゆく思わず唇を噛んだ。

「君は、ここをどうしたいんだい?」

 ケイが呑気な口調はそのままで、表情は引き締めてアイに尋ねた。

「まさか、何の考えもなしに、ここを引っかき回したって言うんなら、おじさん怒るけど、そうじゃないんでしょ」

「さっきも言いましたけど、巫女の力は私たちがここを去れば、なくなってしまいます。けれど、そんな事を皆が納得するはずが無いでしょう。だから、私たちを口実にしてください」

 アイの言葉に、意味がわからなかったらしい、ティーとユウが顔を見合わせていた。ユウも意味を掴みかねたのだから、無理もないだろう。

「口実って?」

 おずおずと、ティーがユウの腕の中から尋ねてきた。

「巫女の力は純潔を持って保たれる――。それが始まりなんでしょう、すべての嘘の」

「どういうことだ?」

 ユウの疑問に、ケイが口を開きかけるが、アイが首を振ってそれを止めた。

「この村にも確かに巫女は居たのよ。その巫女が一人の若者と恋をした。それがすべての始まりだったの。それは、たぶんティーの祖先にあたる人でしょう」

「そうだよ」

 ケイがアイの後を継いで、話し始める。

「巫女の力は、個人のものなんだ。だから、本当は子どもを産んでも、力はなくならない。でもそれじゃ巫女は一生、巫女としてしか生きていけない。村のためにさ。だから、ご先祖は考えた。力が無くなれば、巫女は解放される。そのきっかけをでっちあげたんだ」

「子どもが生まれれば、その子に力が受け継がれたように、その親が振舞う。村に必要なのは巫女の力で、個人ではない。力があれば、それでよかった。でも、それが出来なくなった」

「そう、ぼくのせいでね」

 ケイはティーに向かって、溜息をついた。

「ごめんね、ティー。本当なら、君に力が無くても、エルさえ生きていれば誤魔化せたんだ」

 ユウにはここで初めて出た、エルという名前に聞き覚えがあった。ユウの世界で亡くなった、ティーとケイの母親の名前だ。類似性はこんなところまで、発揮されているようだ。

「ぼくがエルを守れなかったから、お前に、偽りの巫女を押し付つけることになってしまったんだ」

 ケイの言葉は巫女としてのティーではなく、自分の娘に対するものに変わっていた。それは初めての、けれど、彼がずっと言いたかった父としての言葉なのだろう。

「巫女の力は私たちが奪っていったという事で、よろしくお願いします」

 アイはユウの手をとると、ケイに頭を下げた。

「私が巫女の力を持っている事は、ここだけじゃなく、近隣に広まってるはずなので、そこらへんは適当に誤魔化してください。今までやってたんだから、お手のものでしょう」

 アイがこの世界を後にするのだとわかったユウは、荷物を抱えなおすと、アイの傍らに寄り添った。

「簡単に言ってくれるよね。他の村との交渉って、大変なんだよ。その上、この村を治めてさ、君たちの事誤魔化せって、どれだけぼくに働けっていうんだよ」

 ケイは天を仰いで嘆いているが、その表情は明るい。

「大丈夫でしょう。このユウくんは、巫女姫様が大事で仕方ないみたいだから、巫女姫様のために、協力してくれると思うし、死なない程度に、こき使えばいいと思うわ」

 ユウには、こちらのユウの未来が容易に予想できた。同じ存在だと思うと、同情が沸いてくる。

「いいじゃない。ここの二人は一緒にいられるんだから。あなたより、ましじゃない。私に振り回される事もないんだし――」

 アイは意味ありげに笑っていた。ユウはそれを無視して、ケイに頭を下げた。

「俺たちは出発します。ご迷惑をかけましたが、皆さんには感謝しています。ありがとうございました」

「おや、ユウくん、大人だね」

 ケイが茶化すが、こちらのユウは目礼を返してくれた。ティーはユウの顔を見て、何度か唇を開きかけながら、複雑な表情を浮かべていた。

 

「我は使役するもの、我は命じるもの、我は召喚するものなり――

 切り裂け、シルフ。逆巻け、ウィンダー。燃え上がれ、ジード。飲み込め、ダイア」

 言葉と共に複雑な印を結んだアイの姿が、床に沈んで消える。ユウもそれに続く。

 ――ごめんなさい、ありがとう――。

この世界を去るユウが最後に見たのは、ティーの声の無い呟きだった。

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