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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第2章(8)

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第2章の終わりが見えてきました。
けれど、まだ半分もいってない^^;
マイペースで続いていきます。



(8)

 

「思ったより遅かったわね」

 アイの呟きを聞きとめたユウは、思い当たった。この事態はアイが引き起こしたものなのだと。

 おそらく外に出ていたときに、何らかの工作をしたのだろう。

「お前、何考えてる?」

 ユウの質問の意味を正しく捉えただろうアイが、唇だけで微笑んだ。

「何も…」

「そんな訳無いだろ!」

 思わず大声をあげたユウを、唇にひとさし指をあてたアイが制した。

「何かするのは、私じゃないわ」

 声を一際潜めたのは、ユウへのあてつけだろう。思わせぶりな表情のまま、アイはユウに身を寄せると肩口に顔をうずめた。

 突然のアイの行動に意味がわからず、アイの躯をのけようとしたユウがそれを止めたのは、アイの躯が小さく震えていたからだった。

 普段の言動ゆえに忘れていたが、アイも少女だったのだ。いくら特別な力があるといっても、一人で世界を越えて旅をしていようと、自分がどうなるかわからない状況は、恐怖を感じるのは当たり前だ。

 ユウは上げた手をそっとアイの肩に回すと、自分の躯にアイの躯を引き寄せた。躯が触れあう事で、アイの不安を少しでも和らげてやりたかったのだ。肩に寄せたアイの口から、声が聞こえた。

 声はくぐもって小さく、何を言ったのかは聞き取れなかったが、ユウには予想がついた。おそらくアイらしくない、言葉なのだろう。

 ユウは肩を抱いた手に力を込めると、アイの躯をもっと自分に近づけた。

「大丈夫だ。俺がいる」

 自分にも言い聞かせるように、声を出した。ユウが片手だけではなく、両手でアイの躯を抱こうとしたとき扉が開いた。

「誰だ!?」

 アイの躯を抱えるように、ユウは扉から距離をとった。身構えたまま、様子を窺う。

「私です。出てきても大丈夫ですわ」

 扉から顔を出したのは、ティーだった。ユウは躯の力を抜くと、アイの肩を軽く叩いた。

「アイ、大丈夫だ」

 扉を出てティーの部屋に戻った瞬間、風を感じたかと思うと物がぶつかる大きな音がした。

「ッ!?」

 ユウが見たのは、見えない壁に弾かれたように飛ばされ倒れたティーの姿だった。それと同時に、アイの躯が大きく振るえ出す。アイはおもむろにユウから離れるが、震えはまだ続いていた。

「おい…」

 ユウはアイとティーどちらの様子も気になり、身動きが出来なかった。やがてアイは顔を上げた。そして、耐えきれないように笑い出した。

 それは場違いに明るい笑い声だった。そこでようやくユウは、アイの振るえが不安などではなく、笑いをこらえていたからだと思い当たる。

「お前な――」

 不謹慎なほど笑い続けるアイに、心底イラついたユウが近づこうとする。手をアイに触れようとした瞬間、ユウの手も見えない壁に弾かれる。アイの結界だ。

「無駄よ。あなたには、私を傷つけることはおろか、触れさえ出来ないわ」

 アイは立ち上がったティーに、冷たい一瞥を投げたきり、つまらなそうに辺りを見渡した。

「大丈夫か?」

 ユウは立っているのがやっとな様子のティーに、手を差し伸べた。しかしその手はティーが振り払った。

「触らないで!」

 ティーはいつも顔を覆うベールが外れかけ、その顔があらわになっていた。キッと睨みつけるその目は、赤く充血していた。

「あなた達さえ来なければ、こんな事にはならなかったのに!!」

 ティーはもう一度、アイに向かって突っ込んだ。ティーの躯の横で、光を反射しキラリと光るものがあった。銀色の光を放ったのは、鋭利な刃物だ。

 ユウは止めようと動きかけるが、アイは動じることなく自分からティーに近づいた。

「刺せるものならどうぞ。遠慮なんかしなくていいわ、胸を貫くなり、喉を掻き切るなり、お好きなように。巫女姫さま」

 明らかな挑発に、ティーは手の刃物を握り直すと、アイに向かい真正面から突っ込んだ。ユウはアイの強い眼差しを向けられ、様子を見るしかなかった。それにアイの結界は健在だ。ティーがどんな勢いで攻撃を加えようとしても、それは徒労に終わるだろう。

 ユウの予想に反して、ティーの躯は跳ね返される事はなかった。アイの躯に受け止められるように、そのまま密着して止まっている。

 ユウは二人に向かい走った。距離にして僅か数十歩しかないはずだが、ユウにとっては気が遠くなるほど時間がかかっている気がした。

「大丈夫か、アイ!」

 ユウが叫ぶが、返事は返ってこなかった。

 

 ユウは二人のすぐそばに寄ったが、アイの躯からは一滴の血も流れてはいなかった。とりあえずそれに安心すると、ティーの方に注意を向けた。

「――とりあえず、引き取ってもらえるかしら。このお姫様」

 アイは意識を失くしているらしいティーを、支えて立っていた。ユウはティーの躯をアイから受け取ると、少し離れた場所に静かに寝かせた。

 アイはティーが握っていた刃物を、無造作に壁に投げつける。よく研がれていたそれは、柄深くまで壁に突き刺さった。

「荷物を取りに行きましょう」

 アイはティーの存在を無視したかのように、部屋を出て行った。ユウはティーの事が気にはなったが、ここに長居出来ないのはわかった為、アイに従った。

 部屋に戻ると、いつでも出て行けるように一纏めにしていた荷物を手にとる。

 アイもすぐに旅立てるように、準備を整えていた。

「どこに行くのかなぁ?ぼくはあそこでゆっくりしててねって、言ったはずなんだけど。もしかして、忘れちゃった?」

 開け放たれた扉にもたれ、いつもの口調で話しかけてきたのはケイだった。その横には、こちらのユウも控えている。

「お話し合いはどうなりましたの?」

 淑女を装ったアイが、小首を傾げた。ケイはいつもの読めない笑顔のままだが、傍らのユウははっきりとした嫌悪の感情を迸らせている。

「あ、それと巫女姫様の無事は確かめたのかしら。私たちがここに居るということは…」

 アイはここで口を閉じると、意味ありげに微笑んだ。次の瞬間、ユウがアイに飛び掛った。

 ユウの躯はアイに触れることなく弾き飛ばされたが、ユウは卓越した反射神経と運動能力をもって、空中で体勢を立て直すと床に着地した。

 パチパチと乾いた拍手の音が、二手から起こる。ケイとアイだった。

「惜しいわね、これでもっと頭がよければ、よかったのに――」

「彼はこれでいいんだよ。賢いのは、ぼくが使いにくいから――」

「あなたがそうまでして守りたいのは、一体、何かしら?」

 アイはケイの前に立つと、微笑を消した。

「村?自分の地位?それとも、あなたの子どもかしら?」

「ぼくは正真正銘、独身なんだけど…。なんなら、ぼくと結婚するアイちゃん」

「あら、口説くならもっと早くしてくれないと。私たちもう、お暇させていただくつもりなんです」

 口元にだけ笑みを浮かべたアイが、白々しく困ったふりをする。ケイもそれに合わせ、顎に手をやると口先だけの言葉を吐いた。

「やっぱり、おじさんより若いユウくんの方がいいのかな。でもね、年上もいいと思うんだよ。経験とかさ、包容力とかさ。おじさん、自信あるんだけど」

 ユウはこの二人の応酬を聞いていて、頭が痛くなった。性格が悪いのを通り越して、破綻していると言い切ってもいいだろう。

「人を欺くのもお手のものですものね。それも、経験ですわね、おじさま。

――いつまで、茶番を続けるおつもり?」

 アイが笑顔を取り払い、無表情に訊いた。その瞳には、激しすぎて逆に凍りつくまでの感情が潜んでいる事を見て取ったのは、その場ではユウだけだろう。

 それは――怒りだった。

 アイはケイに対し、凄まじく怒っているのだ。冷静な彼女がここまで感情を表すのは、初めての事だ。

「ありもしない力を信じて、自分の娘を犠牲にして」

 ケイの顔が一瞬引きつるが、すぐ元の読めない笑顔に戻る。

「一体、何のことかな?」

「言霊にのせて、村中に聞かせましょうか?あなたが隠している真実を」

 アイはその瞳の激情はそのままに、唇に冷笑を浮かべた。

 両手を胸元に上げると、印を結び始める。幾つかの印を結ぶと、小さく呪いを唱える。

「我は召喚する者、我は命じる者、我が言葉を風の調べにのせ――」

「止めて!お願い!」

 アイの詠唱は、ティーの悲痛な叫びにかき消されるように途絶えた。

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