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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第2章(6)

 ←浦島御堂  後編 →Bird―in―the―cage 第2章(7)
ファンタジーの定番のお姫様も王子様も出てこない、このお話。
魔法っぽいものは出てきますが、結構、SFチックなニュアンスもでてきます。
どこまでが、ファンタジーでどこからがSFなんでしょう…。
カテゴリー分類って、ややこしいと思う、今日この頃です。



(6)

 

「女に庇われるのか…」

 ジェイがユウを見下すように、はき捨てる。しかし、その後の言葉は続くことはなかった。ジェイの背後から、忍び寄った影がジェイの躯を拘束したのだ。

「お前は――」

 それはもう一人のユウだった。

「巫女様の客に、無礼は許さない」

 低く抑えた声が、けれども鋭く響く。ジェイは言葉もなく、ただ頷きユウにしたがっているしかない。

「ごめんなさい。私が感情的になってしまったから。ユウさん、放してあげてくれませんか?」

 アイがしおらしくユウに頭を下げると、こちらのユウはジェイの拘束を解いた。

「アイ様の優しさに、感謝するんだな」

 こちらのユウの言葉は、ジェイだけでなくユウにも向けられている気がした。

 ジェイは一目散に走り去っていった。

 こちらのユウは、それを見届けるとアイに一礼をして踵を返す。

「何かありましたら、お呼びください。この男では役には立ちませんでしょうから」

 黒い布からのぞく、自分と同じ瞳に見据えられ、ユウは唇を噛むしかできなかった。採掘工をしているユウは、体力と機敏さには自信があった。しかし、ここに来てからは、その自信が揺らいでいた。アイのような力もなく、ケイのように人を従わせることも出来ない。まして、自分が護衛として申し分ない能力を発揮しているのを見ると、自分の未熟さが嫌になる。

 足手まとい――。今のユウは、こちらのユウに言われるまでも無く、自分が何の役にも立っていないことを痛感していた。

「あらら、これって、同属嫌悪かしらね」

 楽しそうなアイの様子が、妙に気に障った。アイに守られているのはわかるが、ユウが頼んだ訳ではない。それを他人にとやかく言われるのは、不愉快だった。

 そしてもう一つ、アイの態度だ。ユウを信用していないのか、単独行動が多すぎる。目的も無く行動するとは思えないが、その意図はユウに知らされることはほとんど無い。

「こっちの俺は、優秀みたいだからな」

 アイに八つ当たりをしているとはわかっていたが、一度口にした言葉は、止まらなかった。詰るように、語気も荒い言葉が次々と出てくる。

「おなじユウなら、こっちがよかったとか思ってるんだろ!なんなら、こっちの俺と替わってやろうか!?お前はユウなら、誰でもいいんだろ!」

 ユウの感情をまともにぶつけられても、アイは平然としていた。興味なさそうに、部屋に入っていく。視線すら合さず、部屋の扉を閉めると、テーブルの前に座った。

 二人きりの室内に、気まずい空気が流れる。最も、そう感じているのはユウだけかも知れなかったのだが――。

「あのユウが、私の味方になるのは、巫女のためよ。私の存在が巫女を脅かすことのないように、見張るつもりのようね」

 アイは口元だけに笑みを浮かべる。目はまったく笑っていない、形だけの笑顔。

「あのユウのことは、あなたが一番わかるはずよ。おなじ、ユウなんだから。あなたなら、ティーを守るためにどうするか、考えてみれば?」

 アイはそれだけをいうと、自分の部屋に戻った。

 

「くそっ!」

 ユウは、苛立ちのままにテーブルを拳で殴りつけた。しかしその手は、テーブルに当たる事無く、空気の壁に阻まれて止まった。

 勢いを削がれて、ユウは自虐的に笑うしかなかった。

 椅子に躯を投げ出し、放心したように天井を見つめる。

 ティーを守るために、こちらのユウが存在する。自分ならどうするか考えろと、アイは言った。

 今、ティーは危うい立場にある。それはティー自身が気づく、気づかないを問わずにだ。ティーの従者なら、どうするのか。

 問題は、アイの存在だ。彼女の力は本物で、それはティーが持つと偽っているものだ。アイの行動いかんでは、ティーの秘密が暴露する恐れがある。何としても、それは防がなければならない。

 幸いにして、アイは旅人だ。滞在がどれくらいになるかは不明だが、いずれはこの村を立ち去る。それならば、その間のアイに気を配ればいい。アイが力を使おうが、ティーの秘密さえ守れればいいのだから。

 一番、確実なのはこの屋敷に軟禁することだが、それは無理だ。アイが了承しない限り、アイを拘束することは物理的にも、状況的にも不可能だ。それならば、アイの行動がティーに影響しないようにするしかない。

 誰かがアイの傍で、行動を監視し、不都合が起こりそうな場合を回避する。その場合、監視者は信用できる者に限られてくる。自分なら、その役目を他人に任せるような真似はしないだろう。自分自身でそれを行うはずだ…。

 初対面であれだけ悪印象を植え付けたアイに、こちらのユウがかしずくのは不自然だ。いくら、巫女であるティーがアイを気に入ったとしても、従者のユウがティーの元を離れるのは、ユウの性格が自分と同じなら、絶対にするはずがない。

 ユウにとってアイは、どちらかといえば苦手な相手だ。客としての優待ならば、他の人間に任せた方が気楽だ。

 アイは巫女に会いに行っていた。そのときに、ユウがアイを監視しなければならないと思わせる素振りをしたのだろう。

 アイの思わせぶりな行動に、焦った自分の姿が思い浮かび苦笑する。きっと、こちらの自分もアイの言動に振り回されるのだろうと、少し同情する。

 どちらにしても、ここでの行動は監視されるのは間違いない。今朝の一件で、アイに物理的な危害を与えられないことは、知れ渡ったはずだ。そこに、こちらのユウが付くとなれば、ある程度の知恵が廻る者ならば、アイと自分が不穏分子であることは想像が付く。気が付けば、遠巻きにして関わりを避けるのが賢明だ。

 そうなれば、自然とアイと自分の周囲には、巫女に関わる者しかいなくなる。それは、ティーの秘密を守ろうとするものにとっては有利な状況だ。

 そこまで考えて、ユウはこれはティーやユウが考えたものでな無いことに気づいた。自分はアイのヒントがあればこそ、ここまで考えることが出来た。しかし、ティー達がアイの力のことを知ったのは今朝だ。アイのようにティーの秘密も見破って、その先を考えるには時間が足りないはずだ。

 少なくとも、自分独りでは無理だ。ならば、考えたのは誰か。答えは簡単だ。あのアイですらやりにくいと称した、この村の統括者、ケイだ。

 ユウは記憶に残る、幼いケイの顔を思い出し、溜息をつくしかなかった。

 ――あれが、どこをどう育てば、ああなるんだ――。

 

 どれくらいの時間が過ぎたのか、ユウは控えめに扉を叩く音に気づいた。

「はい」

 とりあえず、声をかけてみる。すると返ってきたのは、意外な声だった。

「私、ティーです」

 急いで扉を開けると、ティーが一人で立っていた。ユウは一瞬考えたが、ティーを部屋に招き入れることにした。

 ティーは大人しく勧められた椅子に姿勢良く座ると、微笑んだ。

「申し訳ありません。突然、お邪魔してしまって」

 ユウの方を向くティーの顔は、ユウの記憶に残るティーの笑顔とは少し違って見えた。けれど、瞳の動きに不自然な様子はなく、よくよく観察しなければ彼女が盲目だとは誰も気づかないだろう。

 鉱山では、薄暗い中の作業が多い。だからこそ、ユウは知っていた。明かりの下と暗がりでは人の瞳の形が異なる事を。

 昨日、ティーの部屋での彼女の瞳と、今では全く変化がなかった。それこそが、彼女の目が機能していない事の明らかな証明だった。

「どうしたのですか?」

 ユウの視線を感じたのだろう、ティーは不思議そうに首を傾けた。

 そのしぐさは、ユウの良く知るティーのものと同じで、ユウは胸が苦しくなった。彼女に約束はしたが、アイとの旅は始まったばかりだ。いつ終わるのかは、アイにさえわからないらしい。彼女に会えるのは一体、いつのことなのだろう――。

「巫女姫様が美しいから、照れているんです」

 不機嫌そうなアイの声がした。部屋に入ってきたアイは、ユウを見向きもせず、ティーの向かいに座る。乱暴ともとれるほどの勢いで座ったアイに、ティーが心配そうに子声をかける。

「アイさん…?」

 アイは拗ねたように、そっぽを向くと小さくけれど聞こえるように呟いた。

「ユウは、私のなのに…」

 ティーはそれを聞くと、アイに向かい微笑んだ。

 ユウは、拗ねたふりのアイの目が真剣なのを見て取り、様子を見ることにした。アイが行動を起すときは、何かしら目的があるはずだ。

 アイは拗ねた口調のまま、ティーに尋ねる。

「巫女姫様には、わからないんです。ユウは、私みたいなわがままな娘より、巫女姫様みたいな人が好きなんです。巫女姫様を見た時の、ユウの顔でわかりました。ユウは巫女姫様のような人が好きなんだって――」

 ユウは慌てて、アイのそばに寄った。アイの目は真剣なものの、その中に楽しんでいる光が潜んでいる気がした。

「俺は別に――」

 大声を出してアイの言葉を遮ったものの、次が続かない。けれど、放っておくととんでもないことまで、言い出しそうな雰囲気だったのは確かだった。

「素直に言えば、いいじゃない!」

 アイは癇癪を起したように叫ぶと、そのまま部屋を走り出て行った。力任せに閉めたらしい扉がやけに大きな音を響かせる。

「アイ!」

 ユウはアイを追おうと足を踏み出したが、ティーが座ったままなのを見て、動きを止めた。

「大丈夫です。アイさんには、ユウがついていますから」

 言いかけてティーは困ったように、口を一度閉じた。そして、ユウに微笑んだ。

「同じ名前なので、ややこしいですね」

「いえ、まあ…。アイは、大丈夫だとは思います。あいつは強いから…」

 取り繕ったような言葉しかでてこない自分の口を呪いながら、ユウはティーの向かいに座った。そこはさっきまで、アイが座っていた席だったが、ユウは気にも留めなかった。

「仲がいいんですね。あなたとアイさんは…」

 ティーは微笑んだままだった。その笑顔は、ティーが別れ際に見せたものによく似ている気がした。だから、ユウはティーの呟きを聞き逃した。小さな、極々小さな、けれど、ティーの心からの呟きを――。

「うらやましい…。私には…」

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