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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第1章(4)

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このお話は、最初とラストが決まっていて、後は書きながら進めていっているのですが――
いやはや、予想外の展開です。

どうしてこうなったんだろう…?




(4)

 

 ティーとケイの母親が息を引き取ったのは、次の日のことだった。

 鉱山の街では、豊かさの裏側で危険が隣りあわせだ。事故があれば、何十人という人間が簡単に命を落とす。人の死は、日常にありふれたものに過ぎなかった。

 もちろん、家族にとっては違うのだろうが――。

 葬儀はひっそりと行われ、ティーは気丈にそのすべてを取り仕切った。ケイもティーを支えてはいたが、意外に役立ったのはアイの存在だった。

 部外者であるアイは、表立ってはいなかったが、細々とした雑事を一手に引き受け、ティーとケイが弔問客の対応に専念できるようにしていた。ユウもティーだけでは出来ない、手続きなどを請け負っていたため、外に出かけることが多く、正直、アイが居てくれたことは助かった。

 葬儀を終えた次の日、もうそこはいつもと同じ風景に戻る。アイは、ティーとケイを一日休ませるとユウに約束したので、ユウは採掘に行った。

 夕方、ティーの家に行くと、客が来ていた。細工師をしているジェイだ。ジェイはユウよりも年上で、親の後を継いで細工師として独立をしている。

 ユウが家に入るとジェイはティーに声をかけ、出て行った。その態度はまるでユウが来たから、話を切り上げたようで少し不愉快だった。もとより、ユウはジェイがあまり好きではない。ジェイは細工師としてはいい腕を持っていたが、その分、自意識が強く細工師以外の職業を見下したところがあるからだった。

「ジェイは何の用だったんだ?」

 ティーは物憂げに、ユウにお茶を出しながら溜息をついた。

「母さんが、ジェイにケイを弟子にして欲しいって、頼んでたみたいなの。だから、その話――」

 ユウは何も言わずにお茶を飲んだ。ティーはユウに聞かせる風でもなく、続けた。

「母さんは、危険な採掘工より、細工師や研磨師にケイをしたがってた」

「そうだろうな…」

 ユウにもティーが、言外に言いたいことがわかり頷いた。採掘工は一番危険な職業だ。母親として、子どもの命を考えるのは当然だろう。それでなくても、ティーの家は父親を早く亡くしている、その思いは一際強かったのだろう。

「お前は、知ってたのか?」

 ティーは首を横に振った。

「あたしも、ケイも知らなかったわ。だけど、ジェイは弟子入りするなら、早いほうが良いからって言いに来たの」

「ケイはなんて言ってるんだ?」

「ケイは、細工師になんてなりたくないって、家を飛び出していっちゃって、アイが追いかけてくれたの」

 ユウは自分がケイに、採掘道具を買ってやったことが、仇になったのかもしれないと考えた。それにティーが磨いた石を、ケイが細工して売れば、材料を買ったとしても充分にやっていける。それも、母親は考えていたのだろう。

「あたしは、ケイには好きなことをやらせてあげたい。それに――ジェイは、あたしのことも言ってきたの…」

 ユウは次の言葉が予想できた。ジェイが出て行き際にユウに向けた視線は、好意的ではなかった。それどころか、敵意がこもっていた。ほとんど、睨まれるにちかいものだった。ジェイとほとんど関わりのないユウが、採掘工だからとそこまで悪く思われる理由は無い。

「仕事か?」

 思いついた二つのうち、当たり障りの無い方を聞いた。

 ティーはあいまいな微笑を浮かべると、頷いた。

「一緒にしようって、誘われたの。それも仕事だけじゃなく、ね…」

「交際を申し込まれたってことか?」

「それなら、まだまし。母さんに了承を得てたって、結婚の話まで持ってきた」

 半ば呆れた口調で、ティーがお茶を飲んだ。

 基本、結婚は本人同士の意志によるものだ。親が一方的に、どうこうする物ではない。

「断ったんだな」

「どっちもね。ジェイにケイを託す気にはならないし、仕事だって一緒にしなくてもやっていけるもの。それが結婚なんて、何の冗談?って感じだもの」

 ティーのはっきりとした言い方はユウにとっては、好ましいものだったが、ジェイにとってはかなり堪えたのだろう。ジェイは割合、裕福に育った苦労知らずだ。年下のティーにはっきりと拒絶されるとは、思っても見なかったのだろう。

 しかし、ユウとしても大事なティーが、ジェイと結婚するのは反対だ。それも、本人でなく亡くなった人間を引き合いにする姑息さが、本人の性格を物語っている。そんな奴は、ろくな旦那にはならないだろう。

 ティーにはもっと、ティーを大事にしてくれ、愛してくれる男がいいと思った。

「ケイはね、ユウみたいになりたいんだって。ケイにとって、ユウはお兄ちゃんであり、お父さんみたいに思ってるのかもしれない。あたしも、頼っちゃてるしね」

 ティーの呟きは、ユウの心に波紋を起すには十分な力があった。

 ユウは、急に息苦しさを感じ、残っていたお茶を飲み干した。ティーはそれ見て、お代わりはいると聞いてきたが、ユウは首を振って断った。

 ティーが口を閉じると、沈黙が広がった。ユウは落ち着かない気持ちを持て余しながら、ティーの横顔を見つめた。

 そんな風にティーを見たことなど、最近は無かった。考えれば二人きりになることさえ、ここ何年かは無かったことだった。

 ティーの睫が思ったより長く、肌も綺麗なことに今更だが気がついた。なるほど、ジェイがティーを欲しがったのも無理もない。近くにいすぎて認識していなかったが、ティーは美しい娘に育っていた。

 ユウは急に、ティーが遠い存在のように感じ、思わず手を伸ばした。テーブルの上で、ティーの手を握ると、その手はほっそりとしていて、ユウの手の中にすっぽりと納まった。

 ティーは驚いたようにユウの顔を見たが、そのまま動こうとはしなかった。

 ユウも手を握ったものの、これからどうすればよいのか途方にくれた。握ったティーの手は温かく、その温もりを感じたことで、ユウはティーを近くに感じることが出来た。

 じっとティーを見ていると、自然にティーの顔に近づいていくのがわかった。

 ティーがそっと目を閉じた。ユウも目を閉じようとしたとき、ドアが開いた。

 ケイがアイと一緒に帰ってきたのは、アイがこの様子を見ていたのではないかと思えるくらい絶妙の偶然だった。

 がたっとあわただしく、ティーが立ち上りると夕食の準備だろう、台所に行こうとしていた。

「もしかして、お邪魔でしたか?」

 なんとなく、気まずい雰囲気を感じたのか、アイがおずおずと口を開いた。

 ユウが口を開くよりも早く、ティーが答えた。

「ちょうど、晩御飯を作ろうとしたところなの。手伝ってくれる?」

 アイとティーが台所に消えると、ユウは溜息をついた。

 夕日が窓から入ってきていて、よかったと思った。そうでなければ、自分の顔が赤いことがすぐにわかってしまっただろう。どきどきと、高まった鼓動がまだ納まらなかった。

「ねえ、ユウ。お姉ちゃん、怒ってた?」

 ケイがユウの隣に座った。そこで、ユウはケイの存在を思い出した。

 深呼吸をしてから、ケイの顔を見ると、ケイは拗ねた子どもの顔ではなく、しっかりとした少年の顔つきをしていた。

「…いや。お前の好きにすればいいって言ってた。けど、勝手に飛び出すのはよくないだろ」

「アイにも言われた。自分の感情だけで、行動するのは子どもだって。お姉ちゃんを守るなら、大人にならないとだめだって…」

「そうだな――。お前もわかったんだろ?」

 ケイは大きく頷くと、立ち上がった。

「僕、お姉ちゃんに謝ってくる」

「ああ。お前は採掘工になるのか?」

 ユウが聞くと、ケイはあいまいに笑った。

「手っ取り早く稼げるからって思ってたけど、僕になにかあったら、お姉ちゃんは一人ぼっちになっちゃうから――」

 ユウはケイの様子で、理解した。ケイは、採掘工になりたいわけではないのだ。ただ、技術を必要とする他の職業では、弟子入りする必要がある。その場合、住み込まなくてはならない。ケイはティーを一人にしないために、細工師なりたくないと言ったのだ。

 確かに、ティーを一人にするのは、ユウも反対だ。気丈なティーでも、まだ若い少女なのだ。それもユウの知る少女の中では、美しい容姿をしている。

 ケイはもう子どもではなく、自分で判断するようになったのだ。きっと、自分の将来をきちんと考えて答えを出すだろう。自分はそれをティーと見守ればいい。

 そう考えて、気がつく。今までユウは、ティーの幸せを祈ってはいたが、自分がそうしたいとは考えていなかった。けれど図らずもジェイの存在で、ティーが他の誰かと結ばれる可能性を身近に感じた今は、自分がティーと一緒にいる未来を想像している。

 見守るだけの保護者の立場ではなく、共に生きていく位置で二人の関係を考えていた。

 つまり、ティーが幸せになるのを見守るのではなく、自分がティーを幸せにしたいと考えていた。

 

 夜になったが、ユウはジェイのことも気になるためティーの家に泊まることにした。

「ここでは、婚姻制度はどうなっているのかしら。

 本人同士の恋愛に基づく、恋愛主体型?それとも、家同士の縁組を主体とする政略型?」

 寝る前に、外に出ていたユウの後ろから声がした。

「お前のところでは、どうだったんだ?」

 振り向かないユウの横に並んだアイは、事も無げに答えた。

「私の話は、参考にならないわ。私は、この世界の人間じゃないもの」

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