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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第1章(3)

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どうも、私は人の首筋に刃物をあてる描写が好きなようです。
何回か、その手の話を書いていることに、気がつきました。
念のため断っておきますが、実生活ではそんなことは、一度もしてませんよ。



(3)

 

 ユウが二人に追いついたのは、アイが言った坑道の奥だった。アイは岩肌に片手をあてながら、片手でその足元を指差した。

「そこを掘ってください。少し小さいですが水晶があるはずです」

 ケイが道具を取り出して、掘り始める。普段なら気に留めることのない足元の岩をどけると、そこにかすかな光が見えた。ケイはそれを丁寧に採掘していく。

「すごいや…」

 ケイが掘り出したのは、大人の片手に余るほどの水晶だった。これほどのものは、そう滅多に出るものではない。その上、その水晶は薄く色がついていた。はっきりとはわからないが、おそらく希少な黄水晶。これほどの大きさなら、研磨をしなくても充分に商品になる。

「ケイ、外でティーが待ってる。それを持っていってこい」

 ユウはケイに声をかけ、ケイの姿が見えなくなるのを見届けた。

「どうして、わかった?」

「私は自然の声、精霊とも言いますが、それを聞けるんです」

 ユウはアイにゆっくりと振り返ると、首を振った。

「そんなことじゃない。俺の名前だ。どうして、わかった?」

「その先の行き止まりを少し掘れば、さっきと同じくらいだけど、発色の良い水晶があるわ。どうする?」

 アイは口調を変えながらも、興味無さそうに言った。

「二つ合わせれば、半年分くらいの収入にはなると思うけど――」

 そのまま、坑道を引き返そうとする。

「質問に答えろよ」

「いまは、採掘工として動いた方がいいんじゃない。外には、待ってる人がいるんだし――」

 アイは顔だけをユウに向けると、唇の端をつりあげた。一見、笑っているように見えるが、目はわらっていない形だけの笑み。それをみたユウは、自分の前にいる少女が実在しないような気がした。

 少なくとも、それは少女のする表情ではなかった。自分はとんでもないものと、対峙しているのではないか。ユウはそんな思いを抱きながらアイを睨んだ。

「あいつらに手を出すな」

 アイは手近な岩に腰掛ると、ユウに笑いかけた。それはさきほどのとは違う、普通の少女の笑顔だった。

「怖い顔しないでよ。私はここにいるわ。逃げないから、早く掘ったら?」

 アイがそこから動かないようだと判断して、ユウは採掘に取り掛かった。

 程なくして、ユウの手にはさっきケイが採ったものより、一回り大きく薄暗い坑道でもはっきりとわかる紫水晶があった。

 

 ユウとアイが出てくると、ケイとティーが駆け寄ってきた。

「これも、掘ってきた。ティーとケイはこれを持って先に帰ってくれ。

 俺は、アイにこのあたりを案内してから帰る」

 なかば強制的に、ティー達を帰した。

 その間、アイは山肌に手をあてたり、空を見上げたりしていた。

「答えろよ。お前は何者なんだ?」

 ユウの問いに、アイは事も無げに答えた。

「私はアイ。それ以外の何者でもないわ」

「どうして、俺の名前を知っていた?」

「あなたが、ユウだからよ…」

 アイの言葉が理解できず、ユウはアイに詰め寄った。

「わかるように、説明しろ!」

 アイはユウに背を向けると、鉱山の別の入り口を指差した。

「あそこ、危ないわ。土の層に水が入っている。近いうちに、崩落するわね」

 ユウはアイの背後から、その首筋にナイフを突き付けた。

「もう一度聞く。俺のことを知っていたのか?」

 アイはその手を上げ、ナイフの刃を掴んだ。驚いたユウが力を緩めると、アイはそのまま刃を自分から遠ざけた。握った手のひらからは、鮮血が流れ落ちる。

「離せよ。切れてるだろ」

 ユウが声をかけても、アイはそのままだった。しかたなくユウがナイフを手放したが、アイは刃を握ったままで、ユウに振り返った。

「ごめんなさい。ナイフ汚しちゃった」

 ユウにそのままナイフを返すと、事も無げに、道端の草をちぎると切れた手のひらに巻きつけた。無造作に巻いたように見えた草は、止血効果のある草だったらしく、アイの手にひらからの出血はすぐにおさまった。

「今は話しても無駄。あなたは私を信用していない。その私が話しても、信じられないでしょう。だから、話さない」

 アイは真直ぐにユウを見た。

「ただ、本当にあそこは危険だわ。行かない方がいい」

「あそこは、最近出来たところなんだ。危険なはずがない」

 アイは興味をなくしたように、ユウから視線を外すともと来た道を歩き始めた。

 ユウはただ、アイの後についていくしかなかった。

 アイの言葉通り、坑道が崩落したのは次の日の朝だった。

 その知らせを聞いたのは、ユウが坑道に行く途中だった。鉱山に近づくにつれ、ざわめきが聞こえてきた。

 顔見知りが走ってくるのが見えたので、呼び止めた。

「どうしたんだ?」

「崩落だよ。この間、掘ったばっかりの奴が、明け方に崩れてたらしい」

「ケガ人は、いないのか?」

「それは、大丈夫みたいだ」

 それを聞いてほっとする。明け方に起こったからこそ、被害は最小限だったのだが、これが採掘中なら大惨事になっていただろう。そんなことになれば、アイの言葉を信じず警告をしなかった自分を責めることになっただろう。

 ユウはざわついた気持ちを抱えながら、ティーの家へと向かった。

 結局アイはしばらくの間、ティーの家に滞在することになっていた。滞在費は、昨日アイが場所を示した水晶が替わりになったらしい。ユウとしては、曰くありげなアイを、ティーの家に置くことは反対したかったが、ケイはもとより、ティーまでもが強く勧めたため、それを口に出来なかったのだ。

 ティーの家に着き、アイにそのことを告げると、アイは何も言わず微笑んだだけだった。そしてアイは全く違うことを口にした。

「市場へ、連れて行ってください」

 虚をつかれたユウが固まると、ティーが付け足した。

「市場なら、探し物の情報があるんじゃないかって、昨日、三人で話したのよ。

 どうせ、今日は採掘できないんでしょ。なら、アイちゃんを連れていってあげてよ」

 どうやら、アイはすっかりティーたちを味方につけたらしい。アイは長旅の間で、商人にだまされ売られそうになったところを、必死に逃げ出した可愛そうな娘を演じているらしい。その話を信じ同情している二人には、昨日アイがみせたもう一つの顔は話せそうになかった。

 アイと行動するというのは避けたいことだが、ティー達からアイを引き離すという意味では都合がよい話だった。

 ユウがアイと一緒に、市場についたのは昼を過ぎたころだった。ユウは昨日の水晶を売りに行く間、アイをどうするか考えたが、アイは自分で調べるものがあるというと、すぐ姿を消してしまった。

「水晶が売れたら、戻ってくるから」

 アイはそう言ったが、事実ユウが水晶を売って、通りに出たときにアイはユウの前に現れた。

「調べ物は済んだのか?」

 ユウが聞くと、アイは目を瞬かせ驚いたように見えた。

「行くぞ」

 不機嫌を隠さず、ユウが歩き始めるとアイが後ろから謝った。

「ごめんなさい。あなたが私を気にしてくれたのが、意外だったから」

 アイの言葉に振り返ると、アイはなんでもないように、

「だって、あなたは私が嫌いでしょ」

 というとユウの横に並んだ。

「ティー達に、お土産買わなくちゃね。後、おばさんの薬もいるんでしょ。

 向こうに良い薬屋さんがあるらしいわ」

 要領よく値切りの交渉も行うアイを見て、ユウは手分けして、買い物を進めていくことにした。

 市場からの帰りに、アイがユウに言った。その声は、暗く沈んでいた。

「もう、長くないわ」

 ユウには、その意味がすぐにわかった。ティーの母のことだ。ユウもうすうす思っていたことだが、不可思議な力を持つアイにははっきりとわかるのだろう。初めは疑っていたアイの力だが、こうも見せ付けられると信じるしかなかった。

「お前の力で、何とかならないのか?」

 ふと思いついて聞いてみる。

「――人の命を?」

 ユウが頷くと、アイは冷ややかな眼差しで見据えてきた。

「随分、簡単にいうのね。人の命を贖うなんて――」

 アイが足と止めたので、ユウも立ち止まった。

「出来るのか?」

 アイはユウの目の前に立つと、唇だけの微笑を浮かべた。

「私を殺せばいいといったら、あなたはどうするの?

 私を殺す?」

 ユウを見つめるアイの瞳には、何の感情も見当たらない漆黒だった。表情もユウをからかっている風ではなく、ユウの返事を真面目に待っているように見えた。

「ここで私を殺しても、誰も気付かないわ。ティーとケイには市場で私と別れたといえばいい。そうするなら、私、自分の命を託すけれど――」

 ユウはしばらく考えたが、首を振った。

「いや。確証がないのに、殺しはやらないな。それに、お前を憎んでるわけじゃない」

「確証があれば、殺すってことでいいの?」

 アイは重ねて聞いてきた。

「そうかもな。少なくとも、俺にとってはお前がどうなろうと知ったことじゃない」

 わざと突き放すように言った言葉に、アイは嬉しそうに笑った。それはティー達に見せる、年相応の少女の笑顔だった。

「よかった、あなたに会えて。でもごめんなさい。それは無理なの」

 アイが頭を下げるのを見て、ユウは内心ほっとしながら、歩き始めた。

「俺はお前のことが、嫌いなわけじゃない。ただ苦手なだけだ」

 そう、付け加えながら。


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