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「ORIGINAL」
Bird―in―the―cage

Bird―in―the―cage 第3章(6)

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 初めは登場人物の名前を考えなくて楽だと思っていましたが、世の中そんなに甘くなかった…。
ただ、ややこしい限りの事態に陥ってしまった―――。
表記を変えたら変えたで、読みにくいし、一体、私にどうしろと?




(6)
 
 ユウは目立つことの無いよう気をつけながら、アイに視線を向けながら淡い光の中に立っていた。ただどうすれば良いのか皆目わからず、立ち尽くしているといった方が適切かもしれない。
 アイはそんなユウに時折見せる、一見、微笑んでいるようだが、その目は笑っていない形だけの笑みを向けて佇んでいた。
 時間にすればそう長くは無いはずだったが、ユウにとっては長い時間が過ぎた。
ユウの足元から発していた光は徐々に弱まり、そして消えていった。後には何の変わりも無い板があるだけで、浮かび上がっていた文様すら目を凝らしても見ることは出来なかった。

「やはり、これ以上は無理なようです…」
 重い口調でアイが告げたのは、その光が消えてからしばらくしてからだった。
 ユウはアイの視線に促されその場から離れ、アイの隣に立った。アイを挟んだじぇいも、重苦しく頷いた。
「そのようだな…」
 その様子は光が現れた時とは正反対の、苦々しい表情だった。自分の思い通りに行かない事が、納得できないと言うのがありありとしていた。
 ここまで立派な館を有する人物なら、それ相応の中身を持っているのが普通だろう。しかしこの男には、それが欠片ほども見えなかった。
 ユウは自分の世界のジェイを思い出し、同じ人間なのだと改めて納得した。
 
 ユウは自分が異文化の研究者というふれこみを思い出し、屈みこんで足元を調べる振りをした。
 板のように見えていたものは、ユウの見たことも無い材質のようだった。金属でも石でももちろん、木材でもない。それに一定時間しか発光しない物質など、聞いたことも無い。
 そこでユウはアイの言葉を思い出した。ここでは彼女の能力での移動は不可能であり、別の手段が必要だと。そしてその為にじぇいの元に行く必要があるのだと。つまり今、ユウの要る所がそれなのだ。だがそれならば、これは何故ユウに反応したのだろう。今まで世界を渡るのはアイの力だった。ユウはただアイの後を着いていたに過ぎない。
 けれどアイはこうなることがわかっていたようで、横暴なじぇいが機嫌を損ねても顔色一つ変えてはいない。それどころか、ユウにだけ見えるように口角を皮肉げに吊り上げると、これ見よがしにじぇいの腕を両手で掴むと、自分の躯をそこに摺り寄せた。
 アイの行動にじぇいは驚いた顔をしたが、すぐに空いている片手をアイの腰にまわす。そして苦い表情を緩めると、その躯を無遠慮に撫で始めた。
アイはじぇいの好きなようにさせたまま、背伸びをして何かを耳打ちした。それを聞いたじぇいは、機嫌を直したようでユウに向かい、大げさなほどに礼を言った。
「さすがは、各国を旅しておられるだけのことはある。アレが起動したのは、初めてでしたぞ」
 そう言われてもユウ自身は、何も変わったことをした訳ではない。アイに促され、その場に立っただけだ。それに礼を言われても、どう返してよいかわからない。
 とりあえず立ち上がって目礼だけはしておく。しかし、じぇいの手はアイの躯から離れようとはせず、それどころか服の中に侵入しようとしていた。
 さすがにユウがアイを助けようと動く前に、アイがさっと身を翻した。それは一瞬の早技で、アイの身体はじぇいの手の届かない距離まで遠ざかっていた。
 
「じぇい様、今日のところはこれで失礼いたします。彼も疲れていると思いますので――」
 じぇいが仕方なくその手を降ろすのを見ながら、アイがさりげなく、けれど有無を言わさす暇を申し出る。ユウの困惑を知っているのか、違うのか、よくわからない絶妙のタイミングだった。
 結局ユウは、ほとんど話もしないままにじぇいの館をあとにすることになった。振り向かず先を歩くアイの後を歩きながら、ユウは館を振り返った。広大な館の二階の窓から、緋色がのぞいていた。

「ねぇ、お腹すかない?」
 唐突にアイが振り返ったのは、てぃーの家の前だった。ユウはそれに答えようと唇を開いたが、それに答えたのは別の人間だった。
「ごはん、出来てるよ。おかえり、アイ」
 ドアを開けて、アイにてぃーが手を差し伸べた。アイはその手に自分の手を乗せると、ユウに構わずてぃーの家に入って行く。
 取り残されたユウは、一つ大きな息を吐くと二人の後を追った。
 てぃーの言うとおり、テーブルにはスープを初めとして、かなりの品数の皿が並べられていた。
「お疲れ様」
 椅子に座ったアイの前に、暖かな茶を置いたてぃーが気遣わしそうにアイの顔を覗き込む。一応、ユウの前にも同じものが置いてあるのが救いというところだろう。それが無ければ、甘やかな空間の異端者としてどうすればよいか途方にくれていたことだろう。
 アイの頬や髪を撫でながら、てぃーはアイの傍らから離れず寄り添っている。アイもユウの知る彼女からは信じられないほど従順に、てぃーの手を拒むことがなかった。
 アイが淹れてくれたものには少し劣るが、それでも充分な味の茶を口に運びながらユウは二人の様子を視野の端に入れていた。そうしていると二人は、ごく普通の恋人同士のようだった。時に冷酷で年齢不詳な表情を持つアイを知っているからか、ユウにとっては違和感が大きいが、今のアイは年相応な少女に見えた。その意味はおそらく、彼女がてぃーに好意を持っているからだろう。もしかするとそれは、好意よりもっと強い感情かもしれなかった。
 自分との対応の違いを見せつけられるようだが、アイ自身はそんな気は全く無いということもわかっている。ユウにとってアイがそうであるように、それ以上に彼女にとりユウの存在は、同行者であり気を使う必要のない仲間という認識なのだろう。
 けれど、世界を救うという途方も無い目的のために、一人で様々な世界を廻っているのは、ユウとそう変わらない少女なのだ。その重圧はどれほどのものなのか――。彼女はユウにそれを感じさせないよう、わざと素っ気ない態度をとっているのかも知れない。そんな思いが、ユウの中で大きくなった。

「――でも、ゆうがどう出るかが問題ね…」
「と言いながら、もう想像がつくところが、何ともね…」
 触れそうなほど顔を寄せ合った二人が、いつの間にかユウの方を見ていた。自分の考えに耽っていたユウは、二人と目が合い、持っていたカップを取り落としそうになった。
「――どちらにしても、このユウが居る限り、あの娘はここに来るしかないんだけど」
「そうだね。結局、あの娘はどこからも逃げられないんだ――」
 慌てたユウをよそに、二人の視線はもうひとりのゆうに向けられているようだった。いつもならそんなユウに対し、からかわない筈の無いアイが何も言わず、アイほど直接的ではないが、似たようなてぃーも同じだった。
 二人はユウを通り越したゆうに向けた視線を互いに戻しながら、溜息混じりの言葉をこぼした。
 アイの独り言のような言葉に対し、てぃーのそれはどこか苦い響きを持っていた。アイはそんなてぃーに小さく微笑むと、そっとてぃーの手に自分の手を重ね合わせた。それはとても自然で、いたわりに満ちた優しいものだった。てぃーもアイの思いが伝わったのか、アイの手を握り締めると、少しだけ微笑んだ。けれどその笑顔もまた、苦笑めいて見えた。
 てぃーの憂いを含んだ表情は、恋人を前にしたものには見えなかった。もちろん、アイとの関係はそこまでのものではないかも知れないが、少なくとも、てぃーの憂いの原因はアイではない。そしてその事をアイも充分に承知しているらしかった。
 
「お腹すいちゃったわ。ねぇ、ご飯にしましょうよ」
 そんな空気を一掃するように、明るい声を出したのは、やはりアイだった。ユウは立ち上がり、小皿に甲斐甲斐しく料理を取り分ける彼女の横で、同じように動いているてぃーから目が離せなかった。
 
「今日は疲れたでしょう。僕はアイの家に泊まりますから、一人でゆっくりしてください」
 一見、ユウのためを思っているようなてぃーの言葉に、食後の茶で思い切りむせたのは当然、ユウだった。
「…どうしてそうなるんだ?」
 少し前の暗い表情など嘘のように、にこにこと笑みを浮かべるてぃーではなく、ユウはアイに尋ねた。しかしアイからも恥ずかしそうな、てぃーと同じような笑顔をされれば何もいえなくなる。

「ああ、戸締りには一応、気をつけてくださいね。襲われても、邪魔をする気はいえ、助けにはいけませんから」
「多少大きな声を出しても大丈夫だけど、ほどほどにね――」
 ユウが頭を抱え込む言葉を残して、二人は家を出て行った。アイの言葉は置いておくとして、てぃーの方はそうはいかない。
 てぃーはユウが襲われる可能性があると言ったのだ。そしてアイは、その相手を撃退してもよいと示唆していた。
 誰が来るのかはわからないが、覚悟をしておく必要があるようだ。
 ユウは顔をドアに向けながら、ベッドに腰掛けた。そして、来訪者が現れるのをじっと待った――。

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